桃子

魔術師の桃子のレビュー・感想・評価

魔術師(1958年製作の映画)
3.9
「初ベルイマン」

先月90歳で亡くなったマックス・フォン・シドー主演の映画。監督はイングマール・ベルイマンである。いつも不思議に思うのだけれど、なぜ「ベルイマン」なんだろう?同じ苗字の女優さんがいる。「カサブランカ」でヒロインを演じていたイングリッド・バーグマンだ。バーグマンの方がずっとおしゃれでスマートなのにねえ。たぶん最初に日本語に訳した人がそういう読み方にしてしまったんだろう。「Bergman」のgは発音しないみたいだから「ベルイマン」の方が実際の発音に近いとは思うけれど…
見て驚いたのは、とにかくシドーが若くてこの世のものとも思えないくらい美形であること。あまりにイケメンなので2度見してしまった。「エクソシスト」のメリン神父と全く風貌が違う!悪魔祓いの時はすでに老人顏だったから仕方ないかな。でも当時はまだ44歳。神父、というと老人、というイメージがあるのかもしれない。
物語は私が今まで見たどんな映画にも似ていない。冒頭のシーンから謎だし、展開も予測不能。官能的なシーンがあるかと思えば、サスペンスホラーみたいな怖いシーンもある。起承転結はちゃんとあるのだけれど、どこかとっちらかっている感じがなくもない。それでも最後まで見入ってしまうのは、面白いからである。面白い、つまり、この映画はコメディなのだ。予備知識ゼロで見始めたときは、てっきりホラーかサスペンスだと思ったので、そのギャップに唖然とした。もっとも、ハリウッド映画のコメディとは異質なので、その笑いが全部理解できるかというと、全く自信はない。私が一番ウケたのは、実験台になった奥さんが、旦那さんの実態をペラペラとしゃべるシーン。あの怪しげな機械は本物なのか見かけ倒しなのか、最後までわからずじまいなのも面白い。
どう考えても変だと思う箇所がいくつかある。ツッコミを入れたくなるけれど、それはまあ笑ってごまかせばいい。落語の「らくだ」やヒッチコックの「ハリーの災難」のように、古今東西を問わず「死体」は物語のネタにされやすいものなのかもしれない。
ウディ・アレン監督はベルイマン監督と交流があったそうだ。インタビュー記事を見つけた。
R.C.: If someone who hadn't seen any of his films asked you to recommend just five, what would be your Bergman starter set?
W.A.: The Seventh Seal, Wild Strawberries, The Magician, Cries and Whispers and Persona.
アレン監督によると、ベルイマン監督のおすすめ映画は「第七の封印」「野いちご」「魔術師」「叫びとささやき」「ペルソナ」の5本だとのこと。ようやく1本クリアである。
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