夜な夜な映画祭

明りを灯す人の夜な夜な映画祭のレビュー・感想・評価

明りを灯す人(2010年製作の映画)
3.5
以前やっていたバンドで海外のフェスに誘われ演奏しに行ったとき、主催者が用意してくれた宿(というか観光では絶対に行かないような雑居ビルの一室)に寝泊まりしながら、現地のスタッフと一緒に飯を食い、少ないながらも交流を持つことで、今そこに生きる人々の生に触れた感触があった。

それ以来、私は自分の暮らしから遠く離れた国に住んでいる人々の生活風景を見ると、あの時の感触を思い起こすようでゾクゾクする。

この映画の前半は、途方もなく広大な草原と、そこに住む人々の静かな暮らしを描く。それをただ眺めるだけで、今ここではない違うどこかで確かに生きる人々の生に接続されたような感覚を得られ、高揚する。

その映像だけでも、私には充分だ。しかしそれだけに、後半の展開はショッキングだ。胸が裂かれるようで、見ていられない。見ていられない、と思うほど、結局私は夢中になって観た。