真田ピロシキ

イップ・マン 序章の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

イップ・マン 序章(2008年製作の映画)
3.9
昨日のマルモイに続いて日本軍加害の描かれた映画を見てみる。この映画を反日と捉える人がいるようだが傲慢ですね。日中戦争当時の中国を舞台にして日本軍を好意的に描くわけないでしょう。記憶の上ではもっと上辺だけは誇りある武術家のイメージがあった池内博之演じる三浦は見返してみると良い所がなかった。侵略者としての立場を忘れながら中国武術に敬意を表したつもりになってる勘違い野郎と思ってたんだけど、勘違いすらない普通にダメなやつでしたね。まあそれでもイップ・マンの弟子であるブルース・リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』に比べるとマシな人間扱いされてる方。

佛山で並ぶもののいない達人であるイップ・マンは他流派と優劣を競う事なく手合わせは受けるが勝敗は恥をかかせないよう相手を慮って隠す。それはイップ・マンが言う武術の仁の精神で他人を自分と同じように扱うことの現れだけれど、占領軍として力で支配して嫌がる相手を無理矢理戦いの場に引きずり出しその癖いけしゃーしゃーと正々堂々なんてちっとも正々堂々としてない手前勝手なカッコつけを宣える連中には仁とは程遠いと徹底的に叩きのめす。本作には道場破りや工場を荒らす暴漢のようにやはり仁とは離れた敵が出てくるのだけれど、それらにすら手加減していた穏やかなイップ・マンが体もメンツもボコボコにする所に強い怒りを感じさせられる。そしてその瞬間は悪役である池内博之の好演もあって胸がすく。

手合わせする相手はリュウやカムなど色々いるが基本的にイップ・マンはレベルがかけ離れているので攻撃を当てられることすらない。武器を取り出されてすら涼しい顔。それに比べて三浦は何発か当ててるので本作における悪役としての面目を保てている。ドニー・イェンに拳を当てた役というだけで池内博之の株は爆上がり。次回作以降では対戦相手がサモハンにマイク・タイソンとビッグネームが続く事を思うと池内さんは凄い。しかもこの後ジャッキー・チェンとも共演してますし。