こちらもまた廉価版DVD。
近隣の自死にあやかって大家にたかり、酒盛りどんちゃん騒ぎに興じる長屋の男どもはたくましいけれど、女性陣はドン引き。そこら辺からもう既に不穏でもの悲しい。
以降作品全体が重苦しい死のトーンに包まれている。海野はもう丸っきりずっとしんどそうだし、新三の小粋な立ち回りもどこか上滑りしている感さえある。カメラもフィクスが多く、どうにも大人しい。
そうした全てが気づけば異様に軽薄で薄気味悪いのである。
このあまりにも冷たく希望の見えない作品が山中貞雄の遺作であるというのが日本映画史のひとつの悲劇。