矢吹

革命前夜の矢吹のレビュー・感想・評価

革命前夜(1964年製作の映画)
4.3
いつだって革命前夜
現在にノスタルジーを感じる精神熱病。
彼も彼女もその病いらしい。
そして、女は女である。
大人は嫌い。男も嫌い。
あなたは子供だから許せます。
だって大人はつまらないから。
という大人の女。

現実と映画の境界がいかに脆いか。
カラーは嘘であり、モノクロは真であるかのような画面構成と、リアルな街の雑踏の中を歩く、演技をしている人。
音楽の自由さ。2人の恋に挿入される完全にオフの歌とMVさながらの優雅さ。
アドリアーノ・アスティが超綺麗だな。
構図が決まりまくってる場面もあれば、
モンタージュに振り回される場面もあるの。
動き続ける中の美しさ。
このバランス。ゴダールはいるが、ゴダールにはなれないという感じで。参加している。
そして我々も参加する。
街の全景と自然の全景のコントラスト。
作中にも言及があった映画の道徳性かな。

愚かで生意気で、君はまだ子供だから、口だけは達者で何もわかってない。
と言われる始末で、そしてこういう言葉には常に反抗的であるもんだ。
ならば、いつから対等にできるんだよ。
皆習慣の中で流されて生きているじゃないかと、
世界の中に演技をしている人が1人。
自分の中で閉じこもる孤独。
死ぬも孤独、触れ合えば地獄。
嘘ですけど。語呂の問題です。
自殺した友は自分自身を嫌っていた。

スキャダラスな愛と革命を臨む若者。
何言ってるか、わからないのよ。
反世間的な、
本や世間に影響されまくる言葉。
彼、かなり思想への思想だけは確かで、かつ、論理的な説明はない。
こいつは求めることを求めているし、その辺も含めて、かなり若さの表現になっていると思うが、
そして彼は、諦める。
祝福の中の悲劇的な音楽、葬式のような結婚式。大人に祝福され、子供に嘲り笑われている。
鬱々とした彼と涙を流す彼女。
ついに大人になっちゃったのかも知れぬ。

これを、大人が描いてるんじゃなくて、
当時22歳の男がやってることが素晴らしいです。

結婚して、1人の大人が生まれて、1人の子供が死んで、過去になった革命前夜。
人生は燃えかすを残して終わる。
ノスタルジーをノスタルジーとして受け取ってしまうようになれば、病気は治ってるのかな。
それでは果たしてあの悩みに意味はあったのか。

「苦しみが僕を生存させた。
今は平穏だが、生存していない気分だ」
「革命前夜を経験したものがこそ、人生の甘美を知る」という回想があるということは、
それでも若さを信じるという猛々しい決意にも見えるし、
最後の晩餐を愉しむ悲しい覚悟のようにも見える。
そんな感じの映画でした。
どストライクなんだよ。
矢吹

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