せんきち

カメレオンのせんきちのレビュー・感想・評価

カメレオン(2008年製作の映画)
3.3

政府要人の拉致現場を見てしまったため仲間を惨殺された詐欺師野田五郎(藤原竜也)の復讐劇。


松田優作の『遊戯』シリーズの映画化されなかった脚本を大幅に脚色しリメイクしたもの。OPに乗れた人には至福、乗れなかった人には突っ込み所だらけの97分。自分は後者。何が凄いかって画面の空気感!どう見ても78~80年製作の映画にしか見えない。カーアクションのシーンに『探偵物語』『大激闘マッドポリス』のフィルムを挿入しても全く違和感はないはずだ。寧ろ、携帯電話やPCが出てくるのに物凄い違和感を覚えるくらい。『三丁目の夕日』みたくCGを使わなくてもノスタルジーは表現できるのだなあと実感。

70年代後半、松田優作に憧れた青年達の“かっこよかったもの”を全く加工せず再現したらこうなるのだろう。製作:黒沢満、脚本:丸山昇一の東映セントラル(現:セントラルアーツ)魂を感じる。監督の坂本順治も“古臭い”ことを百も承知で演出しているはずだ。最早、ハードボイルドアクションなんてジャンルは時代劇のような様式美の世界なのだろう。惜しいのは主役の藤原竜也の線が細すぎることだ。どう見たって菅田俊に藤原竜也が勝てる訳ないでしょ。当たり前の話だが、東映セントラルの世界を成立させたのは松田優作の肉体だったのだ。藤原竜也物凄く頑張ってたけどね。

東映セントラル直撃の30~40代男性は必見だが、寧ろ20代の感想を聞いてみたい。どう見えるんだろ?

確かにこの映画は古い。しかし「止まった時計は日に二度正しい時刻を示す」という言葉がある。セントラルアーツは止まった時計だ。いつか必ず正しい時を示す日が来るはずだ。
せんきち

せんきち