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シャドーのtakのレビュー・感想・評価

シャドー(1994年製作の映画)
3.3
90年代のハリウッド映画は、翻案や他国のコミックの映画化、リメイクが多かった印象があった。良きものを語り継いでいるとも言えるけど、世界から拾ってきたネタを製作費をバックにSFXでお色直しをして、これがハリウッドだと言わんばかり。

そんな中、アメリカ自国ネタを引っ張り出してきた企画が「シャドー」だった。原作は1930年代のラジオドラマで、後にパルプマガジン(大人向けの安価な漫画雑誌)を飾った。パルプマガジンに掲載されていたヒーローものは、フラッシュゴードンやキャプテンフューチャーなどが有名で、バットマンなど大手メジャー作品と比べて、先行するビジュアルは多くの人に浸透していない。それだけに最新技術で映像化するにあたって、オリジナリティが求められる題材。監督には、ビジュアル重視の作風があるラッセル・マルケイが選ばれた。

1920年代にチベットで悪さを繰り返していた主人公ラモント。聖者に愚かな心を抑え込まれた彼は、不思議な力を与えられ、これまでの行いを償うように命じられる。ギャングが悪事を繰り返すアメリカで、ラモントは闇のヒーロー"シャドー"として活動する。そんな折、チベットからアメリカに送られた大昔の棺からチンギス・ハンの末裔が蘇る。世界征服を企む彼とシャドーの対決が始まる。

30年代のノスタルジックな街並み、恐慌に苦しむ庶民がいる街の陰を、美術スタッフが雰囲気を大事に作り込んでいるのが楽しい。マルケイ監督らしいスピード感ある映像が、そのセットを駆け抜ける。悪事の償いという原罪を背負ったヒーローから漂う哀愁。他の映画では似たものがいない悪役の存在感(ジョン・ローン熱演)がいい。興行収入がよかった作品ではないし、多くの人に受け入れられた映画ではない。でも誰かの期待を背負うヒーローじゃなくて、自分で何かを背負って戦うヒーローは、庶民目線でどこか共感できる。まだ太っていない頃の若きアレック・ボールドゥィン。眼のアップもキリリ✨

主題歌はテイラー・デインが歌うOriginal Sin。これ、ボニー・タイラーのヒット曲や「ストリート・オブ・ファイヤー」楽曲で知られるジム・スタインマンの作品。後にミートローフにもカバーされている。分厚いコーラスがたまらなくカッコいい。
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