majizi

ゆきゆきて、神軍のmajiziのレビュー・感想・評価

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)
1.0
悪趣味レベルを超えたドキュメンタリーという体をとったタチの悪いヤラセ。

少し前にニュースを騒がせた、あおり運転で逮捕された危険人物の横暴かつ意味不明なドラレコを見ているかのようでした。


奥崎も戦争被害者だ、ということは否定しませんがその行動や支離滅裂で一貫性のない言動には信念とは言い難いもので失笑、嫌悪感などが浮かびます。


それもそのはずで、そもそもこの監督は彼を撮るために自分の引き出したい「戦争」をネタにして完全に彼を煽っています。
(当初、奥崎自身は教科書問題で文部大臣に車で突っ込むのでそこを撮って欲しいと話していた)


カメラの前や大人数の前で、嬉々として過去の前科を誇らしげに語る様子や、「田中角栄を殺す」と自分の工場や車に標榜して喧伝する様は、現実世界で遭遇したら尋常ではない空気を感じるでしょうし、実際ちょっとアレな人なわけです。

そんな彼にわざわざ近づいて焚きつけた監督の罪は重いでしょう。


戦争を何でもかんでも原因にされると、それらの傷を抱えながらも、なんとか必死にまともに暮らしてきた大多数の人たちはなんなんだと言いたくなります。

暴力がはじまってもスタッフの動揺もなし、カメラは揺れることなくいつだって構図はバッチリです。

子供や孫の前で殴られ、40年も前の出来事をほじくり返される戦地を共にしたお気の毒な方々。

そして実際におきてしまった事件。

私がこのドキュメンタリーで一番失敗してると感じたのはその現場の画が撮れなかったことです。

ここまでしつこくお膳立てをしっかりしておきながら、最後は倫理観が働いて怖気付いたのか、本当は撮っていたけどフィルムとして出せなかったのか、そこまで奥崎と信頼関係を築けず現場に呼ばれなかったのか。

いずれにしても、しょうもないと感じました。
majizi

majizi