たつなみ

デビルズ・バックボーンのたつなみのレビュー・感想・評価

デビルズ・バックボーン(2001年製作の映画)
4.0
ついにオスカー作品賞受賞監督となった(祝!)ギレルモ・デル・トロ監督作品。
ハッキリ言って地味だが、ジワジワ来る怖さときめ細かい人間描写が冴え渡る。

スペイン内戦下が舞台だが、開始直後から『幽霊とは何か?』という問いかけから始まる通り、反戦的なメッセージよりもホラー、ファンタジー要素の方が強い。

少年が何か言いたげな幽霊と出会う…というプロットは『シックス・センス』に酷似しているが、戦時下という状況だからこそ起こる貧困や醜い人間関係といった”人間ドラマ“を丁寧に描いているので不思議と既視感は感じない。
孤児院の老紳士、カザレス先生のキャラクターは特に秀逸。

むしろ本作の方が幽霊のビジュアルが強烈で夜中に一人でオシッコ行くのが怖くなるレベル。
タイトルにもなった二分脊椎症の胎児がラム酒漬け(!)になっている瓶もインパクトが強すぎる。
メイキングによるとこの瓶詰めの胎児の模型を何体も制作したんだとか。
こうした”醜いもの“へのフェティッシュなまでの拘りはホントこの人らしい。

ミステリアスで陰惨な前半部分を味わった後、後半は一気に悪に立ち向かうカタルシスを味わえる。
この辺のストーリーテリングは流石に上手い。

大傑作『パンズ・ラビリンス』の様な派手さは無いが、デル・トロ監督の作家性が見事に昇華した作品。
やはり今の所デル・トロ作品にはハズレが無い。