まるで行者の夢か妄想をそのまま映像にしたようである。延々と続くキリスト像の群れ、犬の死骸がナチスの国旗のごとく乱立している、銃殺される人々から鳩や果物が噴き出す、などなど。前半は特にストーリーらしきものすら存在しないという恐ろしさ。だから、やたら晦渋でつまらないのかというと、断じて否！。見たこともない物凄い映像が、既存の文法に縛られず次から次へと繰り出されると、トリップしているような圧巻の力がある。そして「書を捨てて、街に出よ」な驚愕のラスト。しかし、メッセージとしては、非常に真摯なもので素晴らしい。
