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狂宴のkossのレビュー・感想・評価

狂宴(1954年製作の映画)
3.9
ここまで直接的な日米安保反対の映画がつくられていたことに驚く。それも旧安保条約の時代で、60・70年代安保闘争が動き出す以前だ。

物語は朝鮮戦争下に奈良につくられた米軍慰安施設R&Rセンターによって変わる街と人々を描く。先祖伝来の土地を売り米軍向けキャバレーで一儲けを企む夫婦、堕落する娘、批判し悲しむ祖父。反対派の農民、学校職員、僧侶、人々。

米軍向けの店舗が並ぶ通り、米軍ジープに乗る女学生、法隆寺を歩くパンパン、米軍相手の演奏で金を稼ぎヒロポンを打つ小学生、暴行を受ける反対派農民の娘。米軍向けキャバレーを営む父親は手帳にメモした旧安保条約の前文を読み上げ、抑止力と叫び吉田茂の名前を出す。こうした各挿話とシーンが反対主張を織りあげていく。日米安保によって日本が戦争に加担しているという結論を提言する。激しさと論理性をもつ主張に、現在の我々は気づく。それは現在も変わらずに続いている事態であることに。

監督の関川秀雄が前年に「ひろしま」を公開していることに改めて驚く。また、後に社会党議員になる母親役の望月優子にも納得する。
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