ジョセフ・スタンバーグ監督は、マレーネ・ディートリヒとコンビを組んで7作の映画を残した。その中で最高傑作と呼ばれる。
スタンバーグのディートリヒに対する飽くなき情熱を、強烈な感動と様式美を消化させるべく、主役とストーリーをスペクタクルとデザインのうねりの中で組み込んだ。
スタンバーグの理想の映画撮影は、管理の元で行う光と影を駆使した実験だったという。
列車という限られた空間で人々が行動する本作は、そのスタイルに最適であった。
北京から上海へと向かうある列車が強盗に乗っ取られるというストーリーだが、テーマはあくまでもディートリヒの顔である。
無限のバリエーションによるディートリヒの顔には、ベールがかけられ、陰影が施され、煙が周りを取り囲み、毛皮や羽根に抱かれるなど、白と黒が織りなす複雑なパターン。これが、セットである中国の猥雑な風景画に実に自然に溶け込んでいるのが最大の魅力である。
2023/12/08 U-NEXT
