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標的の村のSariのレビュー・感想・評価

標的の村(2013年製作の映画)
3.8
琉球朝日放送が製作した、渾身のドキュメンタリー作品。

米軍新型輸送機オスプレイ導入に揺れる2012年9月。沖縄県東村・高江では、村を取り囲むように離着陸施設ヘリパッドが作られようとしていた。日常的な生活権を守るために工事を阻止しようとする住民に、着工が強行される...。
元米兵の証言にもある通り、ベトナム戦争時には模擬戦闘訓練に村人が駆り出され、枯れ葉剤も使用された土地の記憶が甦る。さらに、オスプレイ強硬配備前夜、人々は普天間基地のゲート前に座りこみを始める。警官隊の強制排除の一部始終をカメラは捉えるが、実力行使はジャーナリストにも及ぶ。
同じ沖縄に住む人々が、座り込む側と着工側にわかれ、さらに警官側にわかれる。飛び交う怒声は悲しみに溢れ、全編、いたたまれない。いたたまれないが目をつぶるわけにはいかないというメッセージが漲る。

沖縄に配備前から安全性が懸念されるも強硬配備された現在、未だ、オスプレイをめぐっては、事故が絶えない。沖縄では2016年12月に名護市の集落近くの浅瀬に不時着し、大破する事故を起こした他、2021年11月には宜野湾市の住宅の敷地内にアメリカ軍普天間基地を離陸した機体から水筒が落下した時には人的被害が出なかったのが幸いである。
しかし2023年11月29日、屋久島沖で墜落事故を受けて、全世界で各軍のオスプレイの運用を停止していたが、事故原因の究明がされないまま今年3月に再開。安全性の懸念から飛行範囲に制限を受けている機体が県内で飛び交っていることになる。沖縄や九州だけではない。オスプレイ配備場所である、東京・横田基地、千葉県・木更津駐屯地周辺も同様だ。

日米両政府による普天間基地の返還合意から28年が経過したが、米政府による正確な返還期日が示されないまま、沖縄県民は未だに騒音に悩まされ、生活を脅かされているのだ。
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