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モスクワは涙を信じないのKSatのレビュー・感想・評価

モスクワは涙を信じない(1979年製作の映画)
4.2
日本の「男はつらいよ」のように、どの国にも、皆から愛された国民的な人情喜劇というものがあるわけで、それがロシアだと、この「モスクワは涙を信じない」ということになるらしい。

物語はロシアの田舎からモスクワに上京した3人の女の人生を描いた、ということになっているが、途中からは基本的に主人公のエカテリーナ以外はあまり詳しく描かれなくなるという、意外とアバウトかつ開き直った作りになっている。

ソ連映画だけあって、工場労働を続けて社会的に成功した強い女が出てくる、ややプロパガンダ的な側面は否めないが、未婚者の増加というソ連に限らない問題を遠回しに批判しつつ、やっぱり家族が一番、というわかりやすく温かみのあるメッセージは、少し日本映画やハリウッド映画にも通じるかもしれない。

また、プライバシーを侵し、愛を破壊し、家から出ないアル中を増やす、人や文化、国をも衰退させる存在としてさりげなく「テレビ」が描かれており、映画の中でテレビを批判した良い一例として見ることもできる。

それにしても、モスクワの風景は40年近く前から今も、あまり変わってないようで驚いた。男がムードを上げる時にかける曲が、なぜか毎回、メキシコの「ベサメムーチョ」ってのが笑えた。
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