矢吹健を称える会

街の天使の矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

街の天使(1928年製作の映画)
3.9
 前回見たときも何かが引っかかって、『第七天国』や『幸運の星』ほど感動しなかったのだが、今回あらためて見て思ったのは、チャールズ・ファレルがジャネット・ゲイナーを「許す」というのに、どうも違和感をおぼえるのである。中盤で彼が街娼に対しての無理解を示すシーンがあるけれど、当然その無理解が解消されるのだと思っていると、そうならずに終わってしまう。キリスト教の知識があればまた違う感想になるのかもしれない。

 画面・演出のすばらしさは他2作にまったくひけをとらない。特に今回際立つのは音の演出で、まあサイレントだから実際には音は出てないわけだが(当時はサウンドトラックが用意されていて、ほんとに鳴ったらしい)、見ているともうあの口笛が、あのドアノッカーが、頭の中で鳴り響く。ナポリのセット、特にチャールズ・ファレルがうなだれて歩くシーンは、『サンライズ』からの影響を感じる(『第七天国』を撮っているときに別のスタジオで撮影していたらしい)。

 霧のシーンは後に何かの映画でまったく同じ感じで模倣されていた気がする。プレ・コード期の映画だと思ったが。