真田ピロシキ

デスプルーフ in グラインドハウスの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

4.0
10年以上前にこの映画を見た時はタランティーノが初めて外したと思ってた。女のつまらない長話を聞かされ折り返し地点のクラッシュシーンで盛り上がりまた長話の後に笑えるフルボッコを拝む変な映画だと。その頃よりは人間レベルが上がったのかもしれない。長い無駄話がまず退屈ではない。振り返って考えるとガールズトークに興味を抱けず性に奔放な女が惨死するとこだけ盛り上がってたのはセックスの代替行為としてロードキルかますスタントマンマイクと同じだった。前半部分では従来の悪趣味スリラーをねっちりと描いて後半部でお約束破りの大反撃をぶち込む映画はジャンルの愛好者を大いに挑発する。つまらないと感じてたのは自分がつまらないサディストのミソジニストだったというオチ。

フルボッコに至る流れは前以上に痛快。10年前とは感性が相当変化してて最近では残虐表現に対する抵抗が強く昔はフィーバーしてたクラッシュシーンもうえっとなるばかり。だからスタントマンマイクになど嫌悪感しかない。そんな変態ミソジニー野郎が思わぬ反撃を喰らい逃げ回った挙句に全ての尊厳を奪われボコられる展開はザマァ見さらせ。変態殺人鬼を強者として祭り上げたまま倒すなど決してしない。こんな悪趣味ジャンル映画できっちりした倫理観を見せるのもタランティーノの個性かもしれない。『イングロリアス・バスターズ』の史実を無視しても悪を滅したとことかね。

もう一つ10年前と変わった事は車との距離。ペーパードライバーだった当時とは違い今では一応運転してるし、レースゲームなんかも嗜むようになった。このストーリーでニードフォースピードをやれたら最高だ。それと『バニシングin60』は見たので本作のオマージュが少しは理解できるようになりグラインドハウス演出に奇抜さ以上のものを感じ取れたのも楽しめた一因。歳を取るごとにタランティーノがより楽しめるような気がする。新作も楽しみだ。