OASIS

マラソンのOASISのレビュー・感想・評価

マラソン(2005年製作の映画)
3.6
自閉症を抱えた青年チョウォンが、母やコーチの力を借りてフルマラソンを走りきるという話。

映画が終了した後に実話を基にしていたという事を知る。
確かにこれがフィクションだとするとあざとさが目に付き過ぎるのだが、トゥルーストーリーならば過剰気味な演出も許せてしまう。

主人公は走る事に特別な意味を見出してはおらず、自分の殻に篭りがちな息子の為にマラソンを提案する母の方がそれに固執している。
マラソンを完走したからといって障害が完治するわけでも無いが、その行為にわずかな希望を見出して周りが見えなくなる程熱をあげる母親の姿は同情を誘う。
その構図が後半になると逆転していくのも良かった。

罰則の為仕方なく息子にマラソンを教える事になったコーチとのやりとりは、やる気のないコーチと彼がテキトーに言った事を真に受けてひたすらこなすチョウォンとの熱量の差があってゆるい感じに進む。
二人の関係性が深くなっていくと今度は母と息子の距離が開いていって、やがて母の身体に病が襲いかかるという展開も無理が無いし、母の息子に対する過剰な愛情が暴発する様子も痛々しくて悲しさに溢れていて同情を誘う。

ただ、度々シマウマが現れて主人公を導くという演出は話の内容から浮いてしまっている様に思った。
ゼブラ柄のスカートを履いている女性のお尻を触って騒動になるというのも、そこまで盛らなくてもいい様に感じた。

主役の演技は申し分無いし感動出来る作りではあるのに、それを大袈裟に見せようとする演出のおかげで落涙には及ばなかったが、実話だと知った上で観ればまた違った印象になるかもしれない。
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