ガンビー教授

赤い風船のガンビー教授のレビュー・感想・評価

赤い風船(1956年製作の映画)
4.6
そのものずばり赤い風船が登場人物のまわりを生きているかのように動き回る。見えない糸を使っているのかどうか、とにかく生き生きと動く。台詞はほとんど無いままに、その動きだけで感情や物語が語られるのは美しい。画面の色彩感覚も鮮やか。

本来ならカートゥーン(アニメーション)で描くような物語を実写でやっているところがミソで、同じ題材をアニメーションでやればもっと制限なく様々な表現ができるだろうが、しかし本当に風船と人がそこにいて動いて見せていることから来る、はっとするような驚きやそれを見ることができる喜びというものは生まれないだろうなと思う。手法と表現というのは切って離すことができない。

想像でしかないが、ピクサーやディズニーの映画の作り手たちなどはこういう作品から学んで短編作品などに反映させオマージュを捧げているのではないか、と思った。ピクサーならまさに風船をモチーフにした『カールじいさんの空飛ぶ家』などがあるにせよ、例えばディズニー『シュガー・ラッシュ』併映短編『紙ひこうき』だとか、ピクサー『モンスターズ・ユニバーシティ』併映短編『ブルー・アンブレラ』とか本来無生物であるはずの(かつ、人形のように人のかたちに近いという訳でもないようなもの)が意志を持っているかのように動きだす作品は、本作の影響を感じさせなくもない……いや、想像でしかないんだけど、ピクサー/ディズニー作品のオーディオコメンタリーなどを聞いていると「MGM製ミュージカルの照明を意識してるよ」とか、非常に勉強熱心な作り手たちであることが分かるので、本作の遺伝子がどこかにちりばめられていそうだと考えるのはそんなに突飛な思いつきでもないかなと思う。
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