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プラダを着た悪魔のJのネタバレレビュー・内容・結末

プラダを着た悪魔(2006年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

女達の気合の入った朝からもうワクワクする。
アンディというかアン・ハサウェイが女神の如く美しい上、その女神をモデルに素敵なファッションがいっぱい出てくる。
だっさい(だが美しい)女の子がガンガン垢抜けて行く様は理屈抜きに楽しい。
そもミランダや覚醒アンディは当然、あの会社の人々はどのファッションも安っぽかったりだらしがないものがなくて全部気合い入ってる。
ハイブランドだらけで真似はできないけど学べるものが多い。
年数だけで言えば古い映画のはずだが全く古臭く感じない。最先端の世界!って感じがする。すごい。

ナイジェルが推し。辛辣な語彙も好き。ファッションがとても好きで真面目だからこそ甘えたアンディに厳しかっただけで、非常に良き先輩だったのがとても良かった。
地味に「CHANELはマスト」(だっけ?)という台詞が、単に好みとかじゃなくて現代女性のファッションの骨の部分なんだろうなと思えて好き。
エミリーも可愛い。一緒にいたら腹立つ先輩かもだけど必死だし、素直な部分があって良いじゃない。

とはいえ、社畜化して私生活も考え方もめちゃくちゃになっていく様は見ていて辛く、マスカラでまつ毛を直す様子が虚しくて…それがまた良かった。
会社に必死に馴染んでいるだけで、実はアンディ自身の根っこが変わっているわけじゃないんだよなあ。
ボキッと折れた決定打が私生活の崩壊でなくナイジェルに対する仕打ちで、あの場面でケータイを投げ出したのが彼女人間性の部分で踏みとどまれた感があって良い。
(あの噴水のグリーンとゴールドカラーリングとアンディのファッションが一緒なのもすごく素敵)
その上でミランダがアンディに寄せていた信頼が本物だったのも伝わって良かった。
ミランダがただのムカつく上司にあらず、情や脆さが無いわけでは無いものの人を人として見られない気品ある修羅という魅力的なキャラなっているのが大女優の名演だなぁと思う。

厚い化粧もしなくなり、ファッションも肩の力を抜いたけど、自分の好きな服を着てピンヒールのブーツで街を闊歩する姿で締めるラストは、メンタルによっては泣いてしまいそうなくらい素敵。

満点にどうしてもできないのは、なんだか人として辛い描写が多いから。
映画として素晴らしい部分ではあるけど、8割は理不尽で構成された圧に多忙極まり、少しずつ日常が侵食され壊れ仕事向きの美しい歯車になっていく様が存外にリアルなのが恐ろしくなんだかとても刺さってしまうので、何度も見たいのにしっかり見れない。
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