真田ピロシキ

ザ・フォッグの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ザ・フォッグ(1980年製作の映画)
3.7
多分20代の頃にこの映画が面白いらしいと聞いてずっと見たかったのだが、どこのレンタル店にも置いておらず配信時代になってもそれは変わらなくて幻の作品のように感じていた。それが今回ジョン・カーペンターレトロスペクティブ2022という企画で劇場上映。あまり日没後に映画館に行きたくなかったが、これはめったにない機会なので頑張って行った。この時点で期待度が上がりすぎてるので若干の不安も覚えながら。

霧の幽霊が人を殺す映画ということしか知らなかったので、冒頭で漁師のおじさんがキャンプファイヤーにまつわる幽霊の恨み話をした時には「もしかして致してる最中のカップルを殺しまくる古臭い貞操観念塗れの殺人鬼系?」と身構えた。カーペンター監督には何となくスプラッターのイメージがあったし。しかしいざ殺し始めると意外にも血の一滴も出ない。そして映画の進行は結構緩やかで正直眠い!やっぱり「期待しすぎたかなー」と思ったが、攻撃が本番になると感じ方は一変。霧の幽霊達はシルエットで顔を見せることはなくて、ゾンビ化した船員もやはり見えないように見せないことを貫いている。そしてなんと言っても本作の主役 霧である。この霧はCGなどない時代の技術的制約もあるのだろうが、変に人っぽく形どられて安っぽくなることはなく、それでいてその動きには意思めいたものが確かに感じられており、直接的に殺すことはなくても非常に気味が悪い。この不穏さが本作最大のキモ。霧の制御はどうやったのか気になるところだ。そうやって思い返すと、イタズラみたいなレベルだった序盤の予兆も不気味さを増してきて面白い。それでこういう演出ってJホラーのそれよね。黒沢清もリスペクトしてるというのが納得行くというもの。あとゲームの『サイレントヒル』ね。ありゃあモロだわ。『メタルギアソリッド』のスネークが『ニューヨーク1997』由来なのは有名な話だし、コナミはカーペンター監督の子供!カーペンター監督の偉大さを知れて大変良い時間だった。