Foufou

汽車はふたたび故郷へのFoufouのレビュー・感想・評価

汽車はふたたび故郷へ(2010年製作の映画)
2.5
自伝的映画なんでしょうね。旧ソビエト連邦下にあったグルジア(現ジョージア)で映画監督としてのキャリアを踏み出した主人公。幼き頃の映像の重ね方が魅力的ですね。子供が三人、貨物列車のタンクの外に取り付けられた梯子に縦に連なるようにしてつかまって移動するシーンはいかにも映画的だし、本作でも繰り返し現れるんですが、もうそれがこの作品の白眉という感じ。

あれだけ職場や家庭に年寄りがいると、生活における年寄りの存在の重要性が身に染みもする。老害、なんて世知辛い言葉もこの映画の世界観では生まれようがないでしょう。だから心地よくてなんとなく最後まで観てしまった。

幼少期のシークエンスがもう少し深く作り込まれていれば、傑作になったかもしれない。なぜ、カメラや8ミリに興味を抱くようになったのか、写真や映画にまつわる原初体験の表現が弱いですね。政治に縛られたくない、商業映画は撮りたくない……はわかるんですけど、じゃあ何を撮りたいのか、最後までよくわからないまま終わってしまった。

まさか、黒人の人魚譚ではあるまいよ。人魚に誘惑される芸術家なんてイメージは、人三十も過ぎれば若気の至りですと封印しそうなものですけど。

あるいは、七十を超えると、若い時分に詩と混同した陳腐なイメージにこそ、巡り巡ってとらわれるものなのかも知れません。
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