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007/ムーンレイカーのblacknessfallのレビュー・感想・評価

007/ムーンレイカー(1979年製作の映画)
3.8
ボンドと言えば誰か?ってのはその人のボンド体験や映画の好みによるのでかなり割れると思う。
自分の場合は圧倒的にロジャー・ムーア。

劇場公開時で言えばピアーズ・ブロスナン世代なんだけど、やたらとムーア版007がテレビで流れたし、何より作風が好みなのが大きかった。

ムーア版はとことん陽性でノーテンキ、乾いた笑からベタなギャグまであり、危機はあってもムーアはいつも優雅にスルッと解決する。
多少リアルな国際情勢のシビアな面も投影されてるけど、あくまで映画内のスパイスでしかなくメッセージ性も希薄。
何よりムーア・ポンドは"エンド・オブ・ホワイトハウス"のジェルド・バトラーみたいな過剰な国家への忠誠心や愛国心と無縁なとこがいい笑

これはそのノーテンキ度が最高潮の作品。

ポンドが月にある宇宙ステーションでスターウォーズみたいなアクションを披露するからね笑
悪役も当時の冷戦構造だのなんだの枠外で、優生思想を持った大富豪で、こいつが自分が新たな世界の創造主になるべく、自分で選んだ優れた遺伝子を持つ(とヤツが思った)男女数人と密かに作った宇宙ステーションに移住し、地球を破壊し人類抹殺を企む。そして新たな人類を創造する。

最近のボンドしか観てない人が聞いたら腰を抜かすぐらい大味で荒唐無稽なあらすじ笑
密かに宇宙ステーション建設って、もう特撮の悪役だよ笑
雑な命の選別や思い上がりはアベンジャーズのサノスっぽくもある笑

この大雑把だが恐ろしい陰謀をムーア・ボンドがお気楽でご機嫌なグルーブで阻止する。
舞台も宇宙ステーションまでに世界各地を周る。
舞台がタイトに変わることでもっさりしたリズムが気にならなくなる効果がある。
各地でアクションやお色気シーンがけっこうあり、各々に工夫もあり楽しめる。

最初に乾いた笑からベタなギャグまであるって書いたけど、基本的にボンドシリーズは洒脱でオフビートなギャグばかりなんだけど、ムーンレイカーはドリフ的なベタギャグ多い。

そのベタギャグを担当してるのが、ムーア・ボンドを狙う殺し屋ジョーズ。
ジョーズは前作の「私を愛したスパイ」
に登場して、2メートル越えの長身痩身、怪異ながらどこかチャーミングな顔相にセラミックの歯で何でも噛み砕くというプロレスラーのようなギミックで強烈なインパクトを残したキャラ。
前作でもかなりコミカルだったジョーズだけど、それがムーンレイカーではさらにパワーアップしてた。
ブレーキの壊れたロープウェイで執着地点の建物に激突して大破するものの無傷、パラシュートなしで飛行中の飛行機から落下しても無傷、とにかく死なない笑
出てくる度に次はどんなヤバいことなって死なないやつやるんだろうって楽しみになってくる笑
それと殺し屋なのに殺しが下手。
カーニバル中に仮装して参加者のふりをしてボンドガールを殺そうと路地裏で待ち伏せる。
襲いかかろうとしたら、カーニバルの参加者達が押し寄せて襲うことができなくなる。この流れが続き、最後は仕方なくカーニバルの参加者達と踊りながら去っていく。まるでコントだよ😂

何故、ムーンレイカーが一番好きかと言うと、ジョーズのコメディリリーフっぷりがサイコーだからだと思う笑
好き!ってよりスキ~(笑)って感じ。

そんなわけで何回見ても楽しいムーンレイカーだけど、気づいたのは"キングスマン"の1作目は明らかにムーンレイカーを下敷きにしてるよね。
悪役のサミュエル・エル・ジャクソンの野望とか、ポップで洒脱なアクションやお気楽なノリ、全てムーンレイカーにある要素だよ笑
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