nineko

ホーホケキョ となりの山田くんのninekoのレビュー・感想・評価

5.0
度肝を抜かれた。こんなに面白い作品だったのか。紛れもなく高畑勲の最高傑作であるだけでなく、ジブリの中でも一、二を争うマスターピースだと思う。まさか日本のアニメで『白雪姫』や『眠れる森の美女』初見時レベルの衝撃を味わうことになろうとは...

冒頭の、結婚式でのボブスレー(としか言いようがない。とにかく観てくれ)から始まる一連のシークエンスから、凄すぎて全く目が離せない。全編通してとてつもなくアバンギャルドなのに、めちゃくちゃコメディしているし、ゲラゲラ笑っているうちに涙がこぼれてくるような切なさや暖かさも随所にある。とは言え、基本的にはポジティブであっけらかんとしたバイブスに溢れた作品で、その点において高畑のフィルモグラフィの中では異色とも言える。

序盤との円環構造を成すラストシークエンスも完璧。発表された1999年当時の世相を踏まえてもいるのだろうが、ここで語られる「メッセージ」の含意には否応なく胸を打たれる(ギャグシーンでもあるので、めちゃくちゃ笑っちゃったけど)。ここまでさんざん画で驚かせておきながら、最後の最後に作画上のピークポイントを持ってくるという作りもヤバすぎて鳥肌が立った。このイマジネーションが、アニメーターではない(自ら絵を描かない)高畑の脳内から産み出され、しかも具現化されたという事実に恐怖のようなものさえ感じる。

言うまでもなく、矢野顕子が手掛けた音楽や、既存楽曲を援用した挿入歌(曲)も素晴らしい。「ケ・セラ・セラ」(そして「適当」)は、2010年代、2020年代でもその有効性を失うことはないだろう。
nineko

nineko