おけい

浮き雲のおけいのレビュー・感想・評価

浮き雲(1996年製作の映画)
4.5
不況の煽りを受けて失業してしまう夫婦の静かな愛を感じるヒューマンドラマ。

労働者にフォーカスして撮るアキカウリスマキ作品を観るといつも思い知る。庶民の人生ってさ、決して楽ではないよね。ささやかな幸せを糧に精一杯生きてる。

日常のルーティンを大切にしている夫婦。頑張り続けなければいけないとか、こうあるべきって押し付けも要らないし、ナンセンスだと思う。 

老舗のレストランで、長年経験を積み重ね給仕長の仕事についてる妻イロナ(カティオウティネン)と路面電車の運転手の夫ラウリ(カリヴァーナネン)の冒頭の生活の風景にそこはかとない幸せを感じる。

青の壁紙、黄色のカーテン、ワイン色のソファー、狭いながらカラフルな部屋が可愛い。

淡々と現実を受け止め、淡々と打開策を模索する2人のクセになるキャラクター。アキカウリスマキの役者の使い方や演出が大好き。

追い込まれてカケにお金を投じて全額すってしまうとこなんか、何やっとるねん!と思わず笑ってしまったけど。ジャケ写にもなっている夫婦で空を見上げるラストシーンをはじめ、電車の中で仕事中の夫のおでこにキスする冒頭シーンや、妻のカタキと乗り込んでいくもののボコボコに殴られる夫など大好きなシーンが散りばめられている映画。

観終わった後、じわじわくる作品です。
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