いの

浮き雲のいののレビュー・感想・評価

浮き雲(1996年製作の映画)
4.5
なんて素適な映画なのでしょう。カティ・オウティネンさんを観るのはこれで5作目ですが、今までで一番好きかも。赤いコートなど赤がとってもキュート、長い台詞などほとんどなくてジョン・ウィック並みの単語量の彼女が私には天使のように思えてくる。やっぱりカウリスマキの映画は赤と緑がよく映える(決して鮮やかな赤と緑ではないけれど、年季の入ったような赤と緑がとてもいい)。わんこの尻尾の振り方もめちゃキュート♪ 棚の上には子どもの写真


これは〝敗者三部作〟というものの第一作目らしい。夫婦共々職を失い、貯金も失い、家財道具も失っていくけど、決して卑屈にはならない人たち。やることなすことうまくいかないけど、でも決して矜持を手放さない人たち。その矜持は労働者としての矜持、と言っても良いのかもしれない。転がる石のようにはならない。空をごらんよ、あの雲のように軽さを失わないで生きていくんだ、と言っているかのような。だから、彼等は〝敗者〟なんかじゃない。カウリスマキはなんて優しい映画を創るんだ。もう泣くしかありません。でも、わたしもカウリスマキ世界の住人になりたいから、がんばって涙をこらえるようがんばる
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