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ヒロシマモナムール/二十四時間の情事のpikaのレビュー・感想・評価

3.5
寓話的な問答や詩的なモノローグなど全編言葉が面白い。
広島の街並みやフランスの風景などのショットの連続や音楽の印象など、写真のスライドでドラマを生ませた傑作である「ラ・ジュテ」を彷彿とさせ、台詞の上に映像が乗り叙情を生むという面白さがある。

外国人が戦後間もない広島へきて原爆について思いを巡らすこのドラマは、同じ日本人でも戦争の時代を知らない、半世紀以上経て広島へ行ったこともない日本の若者にも共有できる感覚なのかもしれない。
フランスの女優が反戦映画のために広島を訪れ、過ぎ去った戦争に対する思いと過去の恋心を思念しながら出会った異国の男と刹那的な恋をする。
全編を貫く「理解」と「過去と今」いう概念は、国や性別を隔てた先にある決して交わらないことへの憂いや、過去が現在を作っているという現実を如何に受け止められるかを描いているのか。

戦争と瞬間的な恋を絡めるアプローチは面白いし、「夜と霧」に並ぶ貴重な実録映像をドラマに織り込み、戦後の時代を切り取って世に残した存在意義はとてつもない。
広島に対する他国のイメージは「喜び」というのが日本人には考えもつかない概念なので興味深かった。
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