ナガノヤスユ記

いとこ同志のナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

いとこ同志(1959年製作の映画)
4.5
久々に再見。
初期ヌーヴェルヴァーグのイメージに反して、街頭シーンは少なく、全編通して室内劇に近い。かなり個性的なアパルトマンと華美な美術、乱痴気騒ぎをとらえる画面の圧倒的な密度は、黄金期のクラシックのそれにも近い。
華やかで開放的なパリのイメージとは真逆、陰険で、狂気じみた閉塞的パリ。女や友人は勿論、音楽も文学も法学もこの街では救いになるどころか、シャルルのような若者にとっては壁を突き抜けて侵入してくる狂乱の一部に過ぎない。
すりガラスと壁、メザニンと不思議な寝室のイメージ。
半世紀も前の映画だけど、こういう自分以外の世界の全部が自分に敵対してるみたいに見える感覚。わかる、わかるよ。