こしあん

赤い影のこしあんのレビュー・感想・評価

赤い影(1973年製作の映画)
4.0
作品を観ただけだと★3.5
いろんな解説を読み監督の真意を知った後は★4.5
なので間をとって★4.0にしました。

冒頭からラストまで、「何かありそう、何か起きそう」と胸がザワザワする不穏な空気の作り方が抜群で、カメラワークがとても芸術的だと思いました。

多用されるカットバック、字幕の出ないイタリア語、薄暗い迷路のようなヴェニスの街、謎めいたフラッシュバック……さらに、霊能力のある盲目のおばさん、あちこちで発見される遺体、意味深な動きをするホテルマン……もう、とにかく不吉な予感が目白押し!


【以下、多少のネタバレあり】





そして、あの赤ずきんちゃんが振り向いた時の衝撃! 今まで味わったことのない気味の悪さ、おぞましさ。
家で一人で観てて「ひゅっ」って息吸った。絶対、いつか夢に出てくるわ、コレ。

とはいえ、全編を通して意味深だけどモヤモヤする部分が多くて、「えっ?」という思いを抱えたまま終わってしまい……。
気になっていろいろ調べてみると、パズルのピースがピタピタとハマっていき(この感覚、実に気持ちが良かった!)、ようやく監督が描きたかったことが分かりました。

男は理屈に縛られ、女は感情で動く。
恋愛ではお互いを理解しようとするのに、結婚すると自分の気持ちを分かってもらいたくて主張ばかりするようになる、みたいな。
その決定的な感覚の違いやズレが悲劇を生むのだと。

確かにー!!
私自身、結婚して10年ちょっとですが、この感覚の違い、よく分かります。

知れば知るほど奥深い作品。
夫婦として家族として、どうありたいのか。

だからこそ、ムダに長くて生々しいエロさのある夫婦のベッドシーンが重要なんですね。

「亡くなった娘さんはあなたたちと一緒にいる」と言う盲目のおばさんの言葉の受け止め方も、夫と妻で全く違う。
そしてあの、不可解だったラストの奥さんの微笑みの意味もわかる。

でも、一度観ただけではそこまで読み解けなかったよ……わかりにくいよ……。
私にはまだまだ修行が足りぬようです。
こしあん

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