子持ちのカイロレン

喜劇 女は度胸の子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

喜劇 女は度胸(1969年製作の映画)
5.0
 森崎東監督のデビュー作。河原崎建三と倍賞美津子の童貞処女カップルが結ばれるまでを、渥美清と沖山秀子の風俗カップル、クズ親父の花沢徳衛らとの対比で描く。
 とにかく渥美清の猥雑なエネルギーが凄まじく、本来立ち位置上脇役になるはずなのに実質主役。そのせいで映画のバランスは大きく崩れてるが、これはもうしょうがない。ゴミ処理場で愛を交わし、包丁と銃が飛び出す夫婦喧嘩の間で大笑い。あらゆることにいい加減で、結果全ての生き方を肯定する、この映画の精神を体現するようなキャラクターだから。河原崎建三が大事にしてたゲーテの詩集を肥溜めに落とす場面も象徴的。
 最後は縦構図の中で聖と俗が大激突。喧嘩の収拾がつかなくなったタイミングで清川虹子がさらに場をひっくり返す。もう無茶苦茶にかっこいい。男に対する達観と諦念。この人、私生活では伴淳三郎に苦労させられたんだもんな…
「20歳過ぎたら男の性質はどうしても変わりゃしないんだよ」
物凄い説得力。はい、その通りです。