一人旅

ブライトスター いちばん美しい恋の詩の一人旅のレビュー・感想・評価

4.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
ジェーン・カンピオン監督作。

19世紀前半のイギリスを舞台に、互いに惹かれ合う詩人と娘の恋の顛末を描いたドラマ。

『エンジェル・アット・マイ・テーブル』(1990)『ピアノ・レッスン』(1993)といった女性映画の傑作を世に送り出してきたニュージーランド出身の女流監督:ジェーン・カンピオンが、25歳で夭折した19世紀を代表するイギリスの詩人:ジョン・キーツ(1795-1821)とブローン家の長女:ファニーの悲恋の物語を映像化した実話を基にした“伝記+恋愛ドラマ”の佳作。主演はオーストラリア出身のアビー・コーニッシュで、純朴ながら初めての恋に揺れる主人公を熱演しています(後半の“嗚咽”演技に胸がつまります)。

1818年、ロンドン郊外のハムステッド村で家族と暮らす娘:ファニーは、隣家で友人:ブラウンと一緒に詩作中の若き詩人:ジョンと出逢う。二人は交流を重ねる中で相思相愛の関係に発展していくが、しばらくしてジョンが病魔に侵されている事実が判明し…というお話で、女流監督らしくジョン・キーツではなくファニー・ブローン=女性の視点により二人の恋の物語が語られていきます。ピアノ・レッスンでホリー・ハンターとハーヴェイ・カイテルの官能的触れ合いが「ピアノ」を通じて図られたように、本作では「詩」が両者の関係性を接近させる役割を果たしています。ファニーがジョンに詩作の教えを乞う場面はピアノ・レッスンならぬポエム・レッスンのような形を採っていますし、詩の一節を交互に語り合うことで愛を確認する場面に、男女の精神的な心の交わりを大切にしたカンピオン監督の恋愛美学を見出すことができます。本作はピアノ・レッスンとは趣きを異にした“ストイック”な恋愛ドラマが綴られているのです。

四季折々の美しい自然風景を切り取った映像美も出色で、草花が咲き誇る初夏、木々から葉が落ち色彩を欠いた秋、辺り一面を真っ白な雪に覆われた冬…と季節の変化を明瞭に感じられる自然美が全編に亘って映し出されています。また人々が身に纏う衣服の装飾や邸宅内の家具や小物に至るまで、女流監督らしい細やかな拘りが表れています。
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