すずき

何がジェーンに起ったか?のすずきのレビュー・感想・評価

何がジェーンに起ったか?(1962年製作の映画)
4.4
美少女アイドル・ジェーンは巷で大人気だが、姉のブランチは誰にも注目されない少女だった。
だが、2人が大人になった時に逆転。
ブランチは今や映画スター、ジェーンは姉のコネで仕事を貰える、飲んだくれの大根役者だった。
激しい怒りを覚えた彼女は、自動車で轢き殺そうとした結果、ブランチは下半身不随となり引退を余儀なくされる。
そして現在、老いたジェーンは車椅子の姉を2階の部屋に軟禁状態にして、姉の財産で相変わらず酒に溺れていた。
ジェーンの嫉妬と妄想と、姉への嫌がらせは更にエスカレートしていく。
そんなある日、家を売ってジェーンを施設に入れるべきでは、という姉とメイドとの会話をジェーンは聞いてしまう…

63年のサスペンス映画で、監督はロバート・アルドリッチ。
古いモノクロ映画と侮る流れ、狂った女に家に閉じ込められ、精神的に追い詰められていく丹念な描写は「ミザリー」を彷彿させる恐ろしさ。
とはいえ、流石に古い映画によくある、脚本や演出に少し冗長な所もあるけれど、総合的には未だに十分楽しめる、見て損はない作品。
あと「そこ大声あげればいいだろ」っていうツッコミは無しで。

この映画の1番素晴らしかったのは、主人公ジェーンのキャラクター。
白塗り厚化粧の醜いBBAで、酒や不摂生の為か姉よりも老けて見える。
嫉妬深く、我儘で被害妄想が激しく、荒っぽい仕草が目立つ。
フリルが沢山のロリィタファッションで、自分の全盛期である過去に囚われているかのよう。
話し方、仕草の一つ一つが強烈なジェーンという個性を作っていて、その演技力は見事過ぎる!
流石はアカデミー賞で初の10回ノミネート記録を持つ女優、ベティ・デイヴィス!

ジェーンは映画本編の現在の時点で、既に施設に入れるべきか検討されるほど、おかしい精神状態だったが、映画が進むにつれその狂気は増していく。
上機嫌で在りし日の曲を歌い踊り、芸能界復帰を画策するが、鏡に映った醜い姿の自分を見て絶叫するジェーン。
人気者だった少女期、彼女を甘やかした亡き父親、そんな過去を見続ける事でしか、惨めな現在を生きられない彼女が悲しい。
中盤からは加速度的に彼女は狂っていき、その丹念なプロセスを描いた上で、完全に心が壊れた瞬間を描く…。
「何がジェーンに起こったか」その真相が明らかになるオチも含めて、壮絶なラストだった。