レオピン

グッドフェローズのレオピンのレビュー・感想・評価

グッドフェローズ(1990年製作の映画)
4.3
レイ・リオッタ追悼

いい男なのにどこか小物じみてズルこい感じの野々村真イメージだった。孤児出身だったんだなぁ

リオッタ演じるヘンリー・ヒル。ほんとはヤクザなんかよりも料理人に向いている男。トミーの話に合わせてバカ笑いしている所なんか改めてリオッタにしか出来ないと思う。

スコセッシの暴力へのオブセッション。
さすがNYリトルイタリーで肌で感じて育っただけあって、この人の暴力は痛さを感じる。銃把で人をしつように殴りつけたりナイフでメッタ刺ししたり。暴力は痛いという当たり前のことを思い出させる。そしてどれだけ遠ざけていても案外近くにあるんだということも。そこら辺の路上に止まってるトラックの中にも冷凍死体が吊るされているのかという気になってくる。

一応実録モノだけど組同士の争いなどなく、ヤクザの生態という描き方。登場人物はマフィアの中でも下層。トミー(ジョー・ペシ)だけが純粋シチリア系で彼だけは幹部になれる見込みがあった。ジミーはそれに賭けていたのだがあえなく始末されてしまう。しかし盃事の日にやるってのがこれまたすごい。

凶悪なトミーもママの前ではいい息子だった。殺しの間に家に立ち寄ってママの料理を食べる場面。会話が一々面白い。これは旨いね。ナイフ借りていくよ。あの変な絵見せてやれよ。(オカンはスコセッシママ)

この作品、映画史を変えたスタイルってよく言われている。大量の情報を詰め込む圧縮技法。人物のモノローグに一代記。そして決定的なのが音楽の使い方。「幻のアトランティス」も「サンシャイン・ラヴ」もリラックスしてまったり聞くものを、あんなバイオレンスに使うなんて。

これはスコセッシが敬愛する日本映画の影響もあるだろう。人間を徹底的に突き放して描いている視点は『にっぽん昆虫記』で今村昌平がやったことだし、音楽も『酔いどれ天使』で沈鬱な暗い場面でかっこうワルツを使った黒澤明がいる。このスタイルは洗練されて『ウルフ・オブ・ウォールストリート』までずっと続いている。

カレンにロレイン・ブラッコ カイテルの元妻。
ボス、ポール・シセロにポール・ソルヴィノ ミラ・ソルヴィノのパパ。
冷凍死体フランキー・カーボーンにフランク・シベロ こういう髪型のヤクザは推定1万人。
出所した日に消されるビリー・バッツにフランク・ヴィンセント
愛人サンディにデビ・メイザー
ベビーシッターのロイスにウェルカー・ホワイト
スタックスにサミュエル・L・ジャクソン 42才でこの端役、遅咲きだ。

特に華がないのはヘンリーの女の趣味が悪かったせいだ。カレンにジャニス、サンディと本妻も愛人もえっ?な人ばかり。俺ワルええわ。

基本的にこの人たちには掟も仁義も何もないし、奪うことしか知らないある種の動物だ。
すべらない話の独壇場かと思いきや急に真顔で「面白いか?え」とくるトミー、周りの男たちを引きつらせる。笑っていいのか席を立とうか。スタッフさえピリつくムード。
カツラのモーリーに殺気を放つジミーもそうだ。他人の感情を操る暴力に長けている連中だ。

あの日一緒に笑っていた連中も数年たったら誰もいない。死んだか刑務所か一生障害者。
友情?ファミリー? 最初からみんなウソ。なのにどういうわけか魅力的にみえる。危険だ。

このフィルムが不良文化周辺、アコガレーの人たちに今も絶大な影響を与えているのは、やっぱりカチっとしたところを嫌う、ルールやしきたりなんてどうでもいいザ下剋上なところと、
あと最後の、あれだけのことがあっても懲りてない感じの辺りかな。
ヘンリーのあの顔とモノローグは『トレイン・スポッティング』と並ぶ大好きなラストだ。

⇒エンディング シド・ヴィシャス「マイ・ウェイ」

⇒ビリーとトミーがなかよしだった頃のお宝映像
YouTube Goodfellas - 10 years before the shinebox incident Billy and Tommy were friends
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