レオピン

KCIA 南山の部長たちのレオピンのレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
3.9
「君のそばに私はいる 好きなようにしろ」

1979年というのは世界史としては実に重要な年だ。この出来事を描いた作品では、ハン・ソッキュ主演の『ユゴ 大統領有故』があった。同じ頃他国でも元首の暗殺事件が相次いだ。サダト、アキノ。レーガンは未遂。今じゃ無理かもしれないがこれらの映像はくり返し茶の間に流された。だがこの韓国の出来事だけは何か触れちゃいけないといったような暗いベールに包まれていた。。

閣下と呼ばれた男は人を操ることに長けていた

彼と執務室でマッコリを酌み交わしたことを誰だか忘れたが日本の政治家が回顧していた。軍事政権と看做されていたが執務中は軍服ではなく立派なスーツに白いシャツ姿。青瓦台の誰よりも長い時間働き、若き日に日本から学び良いところを取り入れようとした彼のことを経済成長をもたらした国父ととらえる保守派の人たちも多い。日本でもファンは多い。だが彼にとってそうして人の感情をコントロールするのは容易いことだったのかもしれない。

裏切り者呼ばわりの前KCIA部長が犬のように跪く。雑誌を顔面に投げつけられるという仕打ちがヒドいものであればあるだけその権威も高まる。結局は嫉妬で操られているのだ。

うち続くパワハラ三昧にイヤな気持ちになるが、おっ!となったのがパリでのシーン。シトロエンが急角度で車庫に入る映像に既視感。そしてヴァンドーム広場といきなりのメルヴィルオマージュに思わず立ち上がった!

それでもやはりビョン様が情けなすぎて弱すぎて、カク・トウォンのうさん臭さの方が見ていて楽だ。あの解体処理にはウゲっとなるが🥶
例の宴会に呼ばれなかったというだけで、ドシャ降りの中館に忍び込み盗聴する。片思いのティーンエイジャーか。あの宴会が『インサイダーズ』のようなただのアダルティな宴会だったら逆に安心しただろうな。

ラストでも南山に戻るか陸軍本部に行くかに優柔不断ぶりが出ていた。男の嫉妬と競争心を軸にするなら対抗相手の警護部長はやはり雑魚すぎた。観劇中に競うようにパク暗殺の報告を受けるところも盛り上がりに欠ける。暴君に仕えるノイローゼ気味の中間管理職の暴発。キレた明智光秀のようにしか見えないのが残念だった。


この事件もっと別の事情があったのでは? コリアゲート事件とか崔順実ゲートの親父の崔太敏とか。少なくとも事件の輪をなす登場人物はもっといただろう。5年前に起きた「文世光事件」で取り入ったとされる呪術師。ラスプーチンと言われたあの男。彼ら父娘は二代にわたり大統領をコントロールしようとした。部長はカルトにジャックされかけた大統領府を救おうとしたのかもしれない。

真相は分からんが最後に出てきたレイザーラモンRGに似た男が次の大統領となる全斗煥。
その後も、金泳三、そして金大中政権が生まれるまでまだまだ軍事政権が続くことになる。国民には我慢が強いられる。日本の一般の人が韓国に対して本当に暗いイメージを持ったのはこの10・26以降のことではないか。

君側の奸の排除を狙って国体ご一新を目指したものに日本の2・26事件がある。結局暗殺によって物事を動かそうとしてもよい結果には1mmもつながらない。そういえば彼らが唱えたのは昭和維新。朴正煕末期の独裁も自らを維新体制と呼んだ。もう大の大人が維新とかって騒ぐのはプロレスの中かマンションの広告ぐらいにしておいてほしい。

⇒高い緊張を生む韓国の政治サスペンス。不謹慎だが羨ましいのがまだ対南工作ネタがたくさんあるということ。冒頭出てくるフレイザー委員会はあの統一教会の政治工作活動について報告をまとめた委員会。いつか 是非 観たい!
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