てつこてつ

花様年華のてつこてつのレビュー・感想・評価

花様年華(2000年製作の映画)
4.2
1960年代初頭の香港を舞台にノスタルジーとウォン・カーウァイ監督の美学が凝縮された逸品。

この字画からして美しいタイトルが作品の内容を見事に語っていて、手を握り合うことでしか互いの熱い想いを伝える事ができない、それぞれ妻と夫を持つ大人の男女の悲恋を情緒たっぷりに描き出している。

「恋する惑星」「天使の翼」「ブエノスアイレス」などではスタイリッシュな映像が強烈に印象に残るウォン・カーウァイ監督だが、今作では、より渋く、それでいて全カットが美しく映えるように計算され尽くしたカメラワークやライティング、この時代の長屋スタイルのアパートメントの内装、壁紙、カーテン、調度品といった全ての美術セットが芸術的。

二人が出会い分かれるまでの時間は、全て夜のシーン、もしくは日中でも室内シーンと自然光を限りなく排した拘りも、作品にロマンチックな味わいの深みを与えていているし、鏡や格子を効果的に使用した撮影手法も撮影監督を長く務めているクリストファー・ドイルっぽさが出ているが外連味が無くて丁度良い感じ。

そして、何と言っても画になるのは、香港を代表するトップスター二人の豪華競演。

多くの作品でタッグを組んできたトニー・レオンの魅力の引き出し方を、流石に監督は良く心得ている。ツーブロックにポマードが艶やかなオールドファッションの彼が、哀愁漂う表情でタバコの煙を燻らせる姿の格好良さよ。この作品でカンヌ国際映画祭男優賞受賞というのも納得。

シーン毎に、身体にジャストフィットした様々なデザインの襟高のレトロなチャイナドレスに身を包み登場する、高く結い上げた髪形のマギー・ヤャンは、薄汚い路地裏のシーンですら見事な程、美しく映える。

この二人の俳優の横顔のフェイスラインは完璧なまでに美しい。

前日談に当たると言われる「欲望の翼」も久々に見返したくなった。
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