てつこてつ

裏窓のてつこてつのレビュー・感想・評価

裏窓(1954年製作の映画)
3.8
NHKBS4K。お世辞にもイケメンとは言えないヒッチコックが惚れて本作以外にも「ダイヤルMを廻せ!」「泥棒成金」と三回もヒロインとして起用したブロンドの美人女優グレース・ケリー出演作の中でも個人的には一番のお気に入り。

本作での彼女の登場シーンは顔のどアップなので、いかにヒッチコックが彼女にご執心だったのかが窺える。役どころもモデルなので彼女が着こなす50年代の華やかなファッションが見ていて楽しい。

ジェームズ・スチュワート演じる骨折したカメラマンが退屈しのぎにご近所の生活を覗き見していると、ある夫婦の妻が突然失踪。夫が妻を殺害したのでは?との疑念を抱く・・。

マンハッタンのチェルシー地区を想定したアパートのセットが見事。日本でも二重配棟のマンションとかも存在するが、南向き信仰が強いので普通はリビングから眺める景色は廊下側でリビング同士がお見合いになる事はあまり無いが、家具が日焼けすることを嫌がる欧米ではこういう建て方も今でもあるのかな?

いずれにせよ、この映画で描かれるようなカーテンを開けっぱなしで毎日の生活が丸見えで過ごす生活はやや考えづらいが映画の発想としては面白い。

また、撮影手法として、カメラが主人公の部屋からは一歩も出ないスタイルを取っているのもヒッチコック監督作品では「ロープ」が前例としてあるが、あちらはワンカット手法が売りでもあるので、本作はよりエンタメ作品として楽しめる。

ハラハラドキドキする純粋なサスペンスというよりも主人公と恋人、セルマ・リッター演じる看護師との軽妙な会話のやりとりを楽しむコメディ要素もある、個人的には贅沢な作りだと思う作品。

クライマックスの主人公の職業を活かしたサバイバルテクニックもなるほど・・とは初見時には思ったもの。

隔世の感を覚えたのは、「結婚指輪を外して家出なんてしない」という部分。自分が会社員時代、既婚者でも半分以上が結婚指輪なんてしていなかったなあ。

まあ、なんと言っても見所はそのgiven nameの通り、グレース・ケリーの品のある美しさ。これまたイケメンとは言えないモナコ公レーニエ三世に嫁いだ際、ヒッチコックの心中を察すると同情に堪えない。
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