tacky

Mのtackyのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
5.0
素晴らしい。ラングのドイツ時代の代表作だけはある。

モンタージュの使い方が、映画のお手本のように素晴らしく、ドイツ表現主義の作品群の中でも、演出力はずば抜けている。

早々に犯人をバラし、
そこから追う警察、成り行きで追いかけるギャング達、追われる犯人の三位一体の物語の素晴らしさ。

隠れながらも、新しい獲物に食いついてしまう犯人の心の迷い、弱さが、身体と精神のバランスを崩した人間の性を魅せる。

特にクライマックスのギャングや遺族達の裏裁判のシーンは強烈で、中世の魔女裁判のように「殺せ、殺せ」と、がなりまくる傍聴者の怖さと異常性が描かれていた。

そして、ラストシーンの被害者の母親の
「犯人を処刑しても、娘は帰ってこない」
という、現代まで続く人間の葛藤を表した物語の終焉は、これからも永遠に人類に続く課題である事を、深く刻む物語であった。
tacky

tacky