チキン女郎

Mのチキン女郎のネタバレレビュー・内容・結末

M(1931年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

80年前の映画だけど現代でも十分通用する普遍性に驚いた。(精神障害者の責任能力問題や私刑制度の是非)

最後の法廷劇は考えさせられる。ハンスが本当の犯人だったから良かったけど、市民達は少女に声をかけた事と盲目の老人が口笛を聞いたという事だけで犯人と判断したのは、警察みたいなキチンとした証拠無いと駄目だろと思ったし冤罪を生む危険性があると思った。

ハンスが精神異常を告白し、弁護人(この場にこんな冷静な奴おったんかい!!)が「責任能力を問えないからこの場で裁かず警察に引き渡そう」と言うが市民達は「殺された親の気持ちが分かるか!殺せ!!」となるが、こうなるのは当然だし子供を無残に殺された親にすれば精神障害ということだけで罪に問われないのは絶対に許せないに決まっている。
しかし、人の考えは立場が変わると変わってしまうものだ。
もし、自分が精神障害者の立場だったら?身内だったら?犯人を糾弾していた人達も「錯乱して正常な判断ができなかった。無罪にしてくれ」と言うだろう。

リーガルハイでこんなセリフがあったのを思い出した。

「我々は神ではありません。このわたしも含め、愚かで感情的で間違えてばかりのちっぽけな生き物です。そんな人間に、人間を裁くことはできるのでしょうか? いいえ、できません。だから人間に成り代わり“法”が裁くのです。(中略)一切の感情を排除し、法と証拠に拠ってのみ人を裁く。それこそが、我々人類が長い歴史の中で手に入れた法治国家という大切な大切な財産なのです。無論、公明正大なる裁判所におかれましては情緒的な弁論に惑わされることなど微塵もなく、徹頭徹尾、法と証拠のみに基づいて判断なさることでしょう。そしてその場合、結論は明白であります。」

こういう問題って何が正しくて間違ってるかとかをまともに考えると難しいし結論なんて出せないと思う。


それにしてもハンス演じるピーター・ローレがサム・スミスと彦摩呂のハイブリットみたいな顔してたの笑った。