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十三人の刺客のfujisanのレビュー・感想・評価

十三人の刺客(2010年製作の映画)
4.2
本気の三池崇史監督作品に驚愕した作品でした。

工藤栄一監督による1963年の同名映画を三池崇史監督が2010年にリメイクした作品。多作で、アタリハズレがはっきりしている三池崇史監督作品ですが、この作品が最高傑作と推す声も多い、傑作『現代風時代劇』でした。

物語は、
江戸時代末期、将軍の弟で明石藩主・松平斉韶(なりつぐ)の暴君っぷりは凄まじく、家臣の妻を犯したうえに夫である家臣も虐殺、自身を訴えて切腹した家老の一族を皆殺しにしたうえに家老の息子を弓矢の的として弄ぶなど、やりたい放題。

そんな暴君が近く老中に就任するとなり、筆頭老中の土井は斉韶の暗殺を決意。御目付の島田新左衛門に密命を下す、というストーリー。


本作は、若い人にも観てほしいというコンセプトで作られたリメイク作品で、イーグルスの『DESPERADO(ならずもの)』がコンセプトソングとして採用されているなど、一風変わった作品。

リメイクながら、物語のベースは「七人の侍」であり「忠臣蔵」のような”耐えて耐えてやり返す”カタルシスもあって、個人的には今年観た260本近くの映画の中で、TOP5に入る面白さでした。

この映画はとにかく見どころが沢山あるのですが、以下4つの観点で書いてみることにします。


□ 1.超豪華な俳優陣と、自分史上最高の稲垣吾郎

この映画は、当時で考えられる最高の俳優陣がオールスター出演。平幹二朗、松方弘樹、松本幸四郎などの重鎮から、市村正親、役所広司、内野聖陽、伊原剛志など実力派の中堅、そして山田孝之や伊勢谷友介などの若手まで、これでもかというほどのオールスター達。

そして、とにかく暴君を演じた稲垣吾郎のサイコパスな演技が素晴らしい。衣装合わせまで時代劇だと知らなかったエピソードなど、天然でサイコパス的な彼に合った役柄と同時に、市村正親が稲垣吾郎と共演するために出演を決めたというほどの名俳優。個人的にも、自分史上最高の稲垣吾郎を観る事ができました。


□ 2.13人対300人の戦い

本作は、13対300という荒唐無稽な殺陣が50分間も続く映画なのですが、一瞬も目が離せないアクション映画になっています。

13人の刺客が300人の敵と戦うために町を要塞化し、敵を待ち構えることになるのですが、そのあたりが「七人の侍」というか、それをアメリカでリメイクした「荒野の七人」、というか、さらにそれを現代劇化した「マグニフィセント・セブン」の趣があります。

殺陣で際立っていたのは松方弘樹。頭ひとつ抜きん出た刀捌きはさすがの一言で、梅宮辰夫さんとマグロを釣ってる甲高い声のおじさんのイメージが一変しました・・・😅

その他、「忠臣蔵」でいうと大石内蔵助、本作の主人公である島田新左衛門を演じる役所広司も良かったですが、それよりも印象に残ったのは暴君の家臣である市村正親の役どころ。暴君でありバカ殿であっても守らなければならない侍の悲哀と矜持が伝わってきました。


□ 3.死に場所を求める侍

本作が描く時代は、江戸時代末期。侍たちは刀を持っていながらも、実際に人を斬ったことも、戦(いくさ)の経験もありません。

農民や商人ならともかく、自分は何のために生きているのかに自信が持てない彼らは、生死を掛けた殺し合いの中で生きる意味を見出し、ある意味、喜びの中で果てていきます。

そういう意味では、敵も味方も実はあまり関係なく、職業軍人であるサムライの狂気と悲哀を、皮肉を込めて表現しているとも言える作品。

稲垣吾郎演じる狂気の暴君松平斉韶が死闘の中、血だらけで語る『今日という日が今までで一番楽しい』という言葉には、アクション映画らしからぬ怖さと深さを感じ、本作が単なる娯楽映画にとどまっていないことを感じました。


□ 4.その他

・「七人の侍」のオマージュ、抜き身で刺された刀たち
『1本の刀じゃ5人と斬れん!』、「七人の侍」で三船敏郎演じる菊千代が語るセリフです。人を斬った刀は刃こぼれや血糊によって切れなくなるため、菊千代が先に鞘から抜いた予備の刀を至る所に挿しておくシーンがありましたが、本作では剣豪の伊原剛志がやっています。

・泥だらけの殺陣
全力で戦うとどうなるか。本作での殺陣は、スパッと切ってバタッと倒れるキレイな殺し合いではなく、疲労で立てなくなり、泥だらけになって刀も満足に持てなくなった男たちが最後はその辺に転がっている石で殴り合いをするようなリアルな描かれ方でした。

・実話ではないが、元にされた逸話はある
本作は実話では有りませんが、参勤交代の行列を横切った幼児を処刑した松平斉宣という明石藩8代藩主の行いがモデルであるとされています。


あまりに面白かったので、長々書いてすいません。

最後に一つ残念なところは、本作がどの配信にも上がっていないところ。おそらくこれは、伊勢谷友介の大麻所持によるものではないかと思いますが、こんなに面白い作品が配信で観れないのは、とても残念です😓

今回はレンタルDVDで視聴したのですが、「マグニフィセント・セブン」あたりが好きな方は面白いと思うのでオススメです!👍




2023年 Mark!した映画:264本
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