ぼくみん

十三人の刺客のぼくみんのレビュー・感想・評価

十三人の刺客(2010年製作の映画)
2.0
主君の無念を晴らすための仇討ち時代劇。
金のかかった邦画なのに残念ポイントが多い。観るべきはキャストの素晴らしい演技くらい。三池監督の罪は重い気がします。

残念ポイント一つ目。
十三人中、役所広司・山田孝之・伊勢谷友介・伊原剛志の四人以外の人物背景が時間をかけて描かれないこと。人物背景は描かないと割り切って他に時間を割り当てるという選択肢もあったはず。
最後まで特定の誰か一人に感情移入して観るということがありませんでした。

二つ目。
時代劇の描き方が残念。
・本来腹をかっ捌いただけではそう簡単に死ねない切腹シーン
・刃こぼれで実際はできない刀一本で大立ち回りするクライマックスの殺陣シーン

二つ目ともかぶりますが、三つ目。
映画の細部の作り込みが雑。
・松明を角にくくられた牛の大群が興醒めするほどのCG
・最後の決闘後に、汗だく泥んこになって地面に寝そべった役所広司の歯がきらりと白い

せっかく前のめりで映画を見ていても、こういう細かい所で「いやいや」とツッコミが入って冷めてしまう時間ができてしまいました。


でも良かった点を2つ。
一つ目。
完全にミスキャストだと思った稲垣吾郎さんの暴虐非道役はとてもよかった。
無表情且つへっぴり腰に侍の首を一刀両断にするシーンや御膳を盆にひっくり返してこねくり犬食いするシーンなんかは狂気を感じました。

二つ目。
松方弘樹の圧巻の殺陣。
他の俳優さんから群を抜いている極道映画や時代劇の経験値がが見事にスクリーンに出て、鬼気迫る殺陣を見ることができました。
松方さんの殺陣だけは、見る価値あり。

全体を通しては、江戸の泰平に生まれてしまった侍たちの本来の「侍」としての生き方・生き様の模索を考えさせられました。

刺客側も、狙われる殿側も「侍とはなにか、いかにして生きるべきか」という問いや自分なりの答えを持っていてぶつかり合う。

このあたりに重点を置いて描けば、もっと見応えある映画になったのではないかと思いました。
せっかく巨額の制作費をかけた邦画なのに残念でした。
ぼくみん

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