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赤い砂漠のKSatのレビュー・感想・評価

赤い砂漠(1964年製作の映画)
3.8
アントニオーニ初のカラー映画として知られる本作は、やはりいつも通り不毛だが、本作ではそれが男女間のものではなく、ヒロインの心象描写に終始している。故に、アントニオーニ映画でも屈指の物語性の不在を誇る。

ロスコの抽象画にも例えられる本作における北イタリアの工業地帯は、不気味なまでに人気がなく、赤や黄色、緑といったカラフルな色も、人工着色料を髣髴とさせる。

不安に怯え続けるモニカ・ヴィッティの脆い美しさも魅力だが、彼女は一体何に怯えていたのか?
ハッキリとはせず、わからずじまいだが、しかし、1964年の日本もイタリアも、何かが失われはじめていたのは確かで、それが彼女を狂わせる要因になったのは間違いない。冒頭と妄想場面で流れる唄が、それを物語っている。

さて、50年経った今、我々からは、どれくらいのモノが失われたのだろう?
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