トムヤムクン

赤い砂漠のトムヤムクンのレビュー・感想・評価

赤い砂漠(1964年製作の映画)
5.0
この作品は私に取り憑いたかのようだ。
霧に煙る港を走る大人たちのシーン、帆船と女の子のくだりは圧倒的な映像美であるがゆえに、いっそう不可解で不気味だ。
本作にせよ以前観た『欲望』にせよ、アントニオーニ作品においてはわかりやすく何事かが起こることはない。
語るようなことも終わってしまい、それでもなお存在が続く中で何をすれば良いというのか。
できない。一つの対象に注意を向け続けていると幻惑されて理解や判断が追いつかなくなる感覚になるように。
船員に対しての独り語り、いやもはや語りではない。この女もまた自分なのに自分でなくなってしまった漂泊者なのだ。
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