一人旅

小さな巨人の一人旅のレビュー・感想・評価

小さな巨人(1970年製作の映画)
4.0
アーサー・ペン監督作。

【ストーリー】
幼い頃家族を殺されたジャック・クラブ(ダスティン・ホフマン)は、先住民のシャイアン族に育てられる。やがて成長したジャックは白人に捕らえられ、牧師の家に預けられるが・・・。

予想外にコメディ色が強くて観易かった。

白人による先住民族の弾圧が激しさを増す時代の中で、ジャックは先住民族と白人双方のアイデンティティを併せ持つことになる。シャイアン族は“ニンゲン”と自称している。彼らは生き物だけではなく、岩や植物といった全ての物質に生命が宿ると考えているようだ。また、彼らにとって白人は“ニンゲン”ではなく、全ての生命を破壊し尽くす生き物だと認識している。“ニンゲン”として育てられたジャックと、生物学的には白人に分類されるジャック。二つの故郷と生き方を享受するがゆえに葛藤するジャックの姿が印象的だった。

ジャックの最初の妻(白人)が先住民を極度に恐れる場面。おそらく当時の大多数の白人はこの妻と同じ心情だったのだと思う。先住民の素性を良く理解していないがゆえに恐れているのだ。そんな妻とは違って、ジャックは先住民の考え方や生き方を熟知している。本当に過ちを犯しているのは自分たち白人の方であると気付いてしまっているのだ。

また、ジャックの白人エピソードと先住民エピソードがはっきり対比的に描かれているのも特徴的。白人エピソードのジャックはかなり世俗的な生き方をしていて、ガンマンに憧れたり、義母(フェイ・ダナウェイ)に恋したり、仕舞にはアル中になって道端にぶっ倒れたりする。
一方の先住民エピソードでは族長の指導の下、神秘的で原始的な生き方をしている。妻の三姉妹を立て続けに抱くハメになる場面が可笑しかった。

目を覆いたくなるような凄惨なシーンがあるものの、全体的にはコミカルで笑える演出が多かった。
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