よねっきー

晩春のよねっきーのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.9
笠智衆の佇まいが物語に説得力を保たせていて凄まじい。こんなお父さんだったら、そりゃ離れてらんないよな。

飽くまで父娘のドラマから逸脱も飛躍もしないんだけど、親子愛の向こう側に歪んだ愛がうっすらと透けて見えるバランス感がとても良い。はじめて観てからもうしばらく経つけど、ほんとに台詞ひとつひとつ忘れらんないな。序盤の「やきもち焼き」の会話に象徴的だけど、映画を観ている間は風景のひとつでしかなかった可愛らしい会話やシチュエーションが、思えば全て意味のあるモチーフだったと後から気付かされる。几帳面すぎるくらい必要な要素だけで構成されている映画なのに、無機質な印象は受けないから驚く。

終盤で唐突に登場するリンゴのモチーフが良いなあ。明らかに劇中では浮いていて、不可解なイメージ。神話から引用してるってよりも、この場で新しい神話を紡いでる感じだ。
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