「ロッキー」と並ぶシルベスター・スタローンの代表シリーズの第一作。
ベトナム帰りの超人的兵士であるジョン・ランボーが主人公。
戦争で生死を分かち合った仲間をたずねて旅するランボーだけども、唯一生き残っていた戦友も化学戦の影響からガンに冒されて死んでいたことに愕然。
空虚な心のまま、知らない田舎町にたどり着いたランボー。
よそ者を良しとしない町の保安官に絡まれ、ついには逮捕されてしまう。
人権を無視した嫌がらせのような警官たちのやり方に、ついに堪忍袋の緒が切れたランボーは、その戦闘テクニックを駆使して山に逃走、立てこもる。
ランボー対警察の戦争がはじまった。
ランボーと言えば、やはり出てくる敵は皆殺しといった野蛮なイメージが強いんですが、この第一作は意外に死亡者は出ません。
敵が同じアメリカの一般市民ということで、ナイフで足を刺したり、トラップで傷つけたりしするんですが、敵の動きをとめるだけで殺したりはしないんですね。
なにせヒーローですから、原作だとけっこう殺しちゃうらしいんですが、巧く改変されています。
一人だけヘリから落ちて死んじゃいますが、自分が安全ベルトはずしたせいだし、一番理不尽にランボーを痛めつけていた奴だし、保安官が制止しているのに崖のランボーを狙撃しまくっていたし、まあ自業自得なんで無問題。
「ランボー」で優れている部分は、製作当時としては極めてリアルに、特殊部隊じこみのゲリラ戦やサバイバルのテクニックを描写している点ではないでしょうか。
現在の目でみれば稚拙な演出かもしれませんが、動物を襲って肉を喰ったり、森の中でカモフラージュして敵に襲いかかったり、その他にもトラップや誘導作戦など、ランボーのスキルの高さを分かりやすく実感させてくれます。
もうひとつ、本作は単純なアクション映画というだけではなく、ベトナム帰還兵の苦悩を描く映画でもあります。
国のために殺人マシーンとして訓練され、命をかけて戦ったのに、やっとの思いで帰国すれば「赤ん坊殺し」などと罵詈雑言を浴びせられ、駐車場係の仕事さえありつけない現状。
戦場では英雄でも、帰りたくて仕方なかった故郷ではゴミ以下の存在・・・・・
保安官を倒したランボーと対峙する元上官のトラウトマン大佐は、ランボーの事なら全て知り尽くしているつもりと語っていましたが、帰国した後のランボーの事は全く理解できていなかった自分を知ります。
ランボーは、悔しさや寂しさ、その心の痛みをすべてさらけ出してトラウトマン大佐にすがりつきます。
原作ではここで自ら大佐に撃たれて死ぬランボーですが、映画では大佐に説得されて投降します。試写の段階でランボーに感情移入した観客たちがランボーが生き続けるラストを希望したからです。
結果的に、このランボーが生き残るラストが功を奏して、製作陣にとっても、スタローンにとっても、シリーズを継続してヒット作を生み出せたわけでベストな選択であったと言えるでしょう。
シリーズ最終作(いまのところ)である「ランボー/最後の戦場」のラストで父親の待つ故郷へ帰るランボーですが、そこに至るまでの「長い道のり」の始まり、それがこの第一作目であり、ランボーの内なるキャラクターが最高に描写された傑作だと思います。
テレビ放送、レンタルビデオ、セル・ブルーレイにて