ゴシちゃん

人斬りのゴシちゃんのレビュー・感想・評価

人斬り(1969年製作の映画)
4.1
『御用金』『鬼龍院花子の生涯』の五社英雄監督が劇画チックに描く幕末、土佐の人斬り以蔵の物語。
1969年の作品です。
岡田以蔵を勝新太郎、武市半平太を仲代達也、坂本龍馬を石原裕次郎、薩摩の田中新兵衛にはなんと三島由紀夫が出演しています。

80年代のなか頃に松竹系でリバイバル上映があり、その後VHSビデオが発売されていましたが、DVDでは現在も未発売のままでした。先日BSジャパンで放送されたので、VHSで観て以来の約30年ぶりに鑑賞する事が出来ました。

土佐勤皇党が京に出て来たあたりから、以蔵の処刑までの物語ですが、時代背景等の詳細は語られず話が進みますので、ある程度の歴史・背景等を知った上で観ないと面白味というか理解しにくい作品ではあると思います。

それにしても出演している俳優陣の熱演が見事。
喜怒哀楽が激しい豪快な以蔵の勝新太郎。『龍馬伝』の佐藤健の以蔵とはえらく違うイメージで、まさしく豪快な以蔵像を作り上げています。
この翌年に壮絶な死を遂げる三島由紀夫のただ事ではない存在感。異様なほどの目の光はすでにその自らの死を見据えているようです。

汗臭く、血ナマぐさく、ホコリっぽく、薄汚れて、冷徹な武市にいいように利用されつくし、仲間を売った事で得た金を京の不幸な女(倍賞美津子)に送り、最後は処刑されてゆく以蔵。
以蔵を九州に誘い、何も知らずに迎えにくる石原龍馬。

幕末の男たちの哀しい生きざまが泣かせてくれます。
ゴシちゃん

ゴシちゃん