みどり

熱帯魚のみどりのレビュー・感想・評価

熱帯魚(1995年製作の映画)
4.0
2022/6/6

夢を見るすべての人に捧げる

受験戦争の波にどうにも乗れずうわの空なツーチャン
大好きな子とは何も進展がなく
ただ見つめているだけ…
そんな時、誘拐事件に遭遇し、被害者の男の子と共に自分も誘拐されることに


誘拐犯、そしてその家族との謎の生活がはじまる
受験だ、勉強だ、と毎日のように言われる生活とは正反対に、海でゆっくり遊んだり家族団欒でご飯を食べたり。
この家の居心地は悪いわけではなく
自分とはまた違う家族のもと育ったワンとも兄弟のような不思議な関係になっていく
被害者と誘拐犯の関係にしてはとてもユーモア

けれどツーチャンが受験生だとわかると
手のひらを返したようにどうにかして勉強させようとするアケン
それはかつて受験戦争に負けてしまい、苦しい思いをしてきたからで自分のようにはなってほしくないという願いから。
彼がちゃんとした職に就いていれば家族の暮らしも今よりは豊かで
誘拐なんてしなくてもよかったのかもしれない

身代金がほしいだけ。もらえたらすぐに解放する、とはじまった生活もいつしか居心地が良くなってしまう
一種のストックホルム症候群なのかな


長い人生、夢だけでは生きていけないけれど
今の自分を大切にすること
真っ直ぐに進んでいくこと

ずっと言葉を交わさなかった相手が教えてくれた

ふと空を見上げたらあの大きな熱帯魚が空に浮かんでいるのかもしれない
みどり

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