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ブラックパワーミックステープ〜アメリカの光と影〜のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

3.7
1968~1975年の間にスウェーデンのテレビ局がアメリカで黒人、とくにブラックパワーとブラックパンサーについて取材したテープに、現代のナレーションを間に加えたもの。

スウェーデンがアメリカのベトナム戦争に抗議し(68年)、さらにナチスと喩えたこと(72年)で外交関係が凍結されていた期間(~75年)の映像である。

アメリカに強く物言える国スウェーデンの視点は貴重。反戦活動にまで広がったブラックパンサー党の幹部の取材を通して、アメリカの暗部にスポットを当てている。

映画作品でしか名前を知らなかったブラックパンサー党。その始まりはキング牧師の非暴力の姿勢に不満をもった若者ストークリーだった。たしかに言い分はよくわかる。こんなに痛めつけられているのに、もう片方の頬は出せないと言う。しかしマルコムXのやり方は極端過ぎるしムスリムではない。それなら自分たち若者でと始まった。

ブラックパワーを提唱し、民族主義を唱え、反戦運動と合間って、奴隷制度によって繁栄してきた資本主義を否定する。貧困層の子供たちに無料の食事を提供する代わりに政治教育を施していく。そこまでは共産主義化だと思っていたが、さらに武装集団と化していく。

幹部であるアンジェラ・デイヴィスへのインタビューは無実の黒人が攻撃され死亡した事件(「フルートベール駅で」)でも引用されていた。

--銃を持つことは暴力ではない、子供の頃から大勢の罪なき黒人が身近で殺されてきたのを見てきた。外に出れば殺される不安を常に抱えている。それを暴力といわないのか。命を守るための護身を暴力というのか?--というような内容。


過激化する集団は抑圧され、ストークリーは海外へ脱出。

本作品に一本の主張があるわけではなく、現代にも続く悲惨なアメリカの姿が映し出されているだけだった。プロパガンダ的だからだろう。


📖 日本にも反戦運動の「ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)」があったが、市民の穏やかな反戦運動で、組織化されていなかったために、急進派がその運動を利用したりで、当初の想いとは違った方向に舵が切られていった。
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