テオブロマ

フルメタル・ジャケットのテオブロマのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
3.6
かの有名なハートマン軍曹を拝むためだけという不純な動機で観始めたら、思ったよりも深かった。戦争によって人はここまで人間性をなくすのかという一方、人間性を剥き出しにしたからこそああしたんだということもたくさんあって、何が正しいのか分からなくなった。

ハートマン軍曹役のリー・アーメイは元本職だったということもあり、凄まじい迫力と下品な物言いでただひたすら強烈だった。あのしごきは実際に戦地に行った時に備えて、どんな不条理にも耐えうる精神を養うためにあえてしていたんだなということは分かる。分かるがやっぱり色々とひどいし、不謹慎ながら笑ってしまう。特にランニング中の軍曹の歌、ほんとひどい。最低(褒め言葉)。こいつはどこまで皆の足を引っ張るんだとイライラしながら見ていた微笑みデブがまさかあんな事になるとは…。石鹸制裁以降、ジョーカーと同じ表情で彼を見てしまっていたと思う。恐ろしい演じ分けで、例のシーンは鳥肌が立った。Full…metal…jacket…!

前半との比較でどうしても後半はダレて感じるけれど、クライマックスのあのシーンを印象付けるために必要なことだったのかもしれない。

悪名高き誤訳の女王、戸田奈津子氏のぬるい訳を一蹴し、原田眞人氏に元の台詞に忠実な字幕を付け直させたという監督のこだわりに拍手。流石キューブリック!ありがとうキューブリック!
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