救済P

ドラえもん のび太の宇宙漂流記の救済Pのレビュー・感想・評価

3.6
ドラ映画20作目。

全体的にデザインのディティールが細かく、また『ねじ巻き都市伝説』から続くOPコンテ・演出・作画監督の藤森雅也と演出の善聡一郎を迎えているということでねじ巻きから固有の動き方をする。

マクロスシリーズのメカニックデザイナーで知られる宮武一貴およびスタジオぬえをスタッフに迎えており、抜群に敵と戦闘機のデザインが良くなった。ドラ映画における異形は、前作『南海大冒険』におけるリバイアサンや、『パラレル西遊記』の金閣・銀閣など、どこかコミカルなものが多かったが、今作は恐怖を伴うモンスターデザインに仕上がっている。
そのためか、全体的に雰囲気は暗く、恐ろしい。藤森、善に特徴的な1カット内での行動量の多さや、パースの効いた構図が恐怖表現に一役買っている。特に「眩惑の星」における演出は一級。最後に同じシーンを使いまわすことによって糸を引く恐怖を演出している点も評価したい。

恐怖表現やデザインにおけるディティールの細かさに関しては無類だが、シナリオはいたって単純。テーマも「出会いと別れ」そして「環境破壊批判」とこれまでと大差ない。珍しく仲間内から裏切りものが出るが、即座に和解するためそれほど物珍しくはない。「ユグドの木」にリアンの母が宿っていたり、特に理由なく「神樹の実」に幻覚を覚ます効果があるなど突拍子のない設定も多い。敵は洗脳タイプゆえに船団を洗脳して巨悪として機能しているが当の本人はクソ雑魚なので戦闘にアツさはなく、イマイチ。正体に関して「みんなの心の奥に潜む悪意の塊」と結論付けられているのも適当すぎる。戦闘描写に関しても前半の「スタークラッシュゲーム」内における動きは素晴らしかったが後半の実践では力尽きており、静止画がスライドする程度しか動きがなかった。「フエルミラー」で「ビッグライト」を増やし「ひらりマント」を大きくし四隅を船団に結びつけるとかいうあまりにも回りくどいソリューションが本当に回りくどい。なぜ最終的に地球への移住を諦めたのかよくわからなかった。SPEEDの歌うEDは曲は良いが世界観と嚙み合ってないように感じた。

デザイン・曲・演出とこれまでのドラ映画と一線を画すクオリティを見せたが、細かい点で不満も多く、シナリオは平凡な作品だった。しかし、ドラ映画最大といっても過言ではない恐怖表現は観る者すべてにトラウマを残す本作固有の魅力であった。
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