ナガノヤスユ記

疑惑の影のナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

疑惑の影(1942年製作の映画)
3.7
こちらも500円DVDで久々に。


憧憬と不信の二律背反みたいな今日氾濫しつくしたストーリーのさしずめプロトタイプのような。相変わらず即物的な真相にほとんど興味を示すことなく、心理の表象ばかりに引き摺られていく演出。お世辞にもあまりバランスがいいとは言えないが、これはこれで見所に困らない。
字幕がまるで追いついていかないレベルで口喧しい姉弟や、反面一見寡黙で犯罪小説について語る時だけ途端に饒舌になる亭主など、脇のキャラクターにはかなりエッジが効いてるのに、肝心のヒロインが割とあっさり翻るこの軽薄さはある意味スリラー。汽車から降りてくる叔父と、姪の再会のシーンがよく撮られているだけに尚更。

ある種の寝取られ夫の物語だなこれは。